第
1
講
【1】 イソロイシンとトレオニン。いずれもCαだけでなくCβのまわりにも異なる原子(原子団)が付いている。
L─イソロイシンでは次図の描き方でCβの右側に水素が,L─トレオニンではCβの左側に水素が結合して
いる。それぞれ逆の配置では「アロ(allo:「他の」の意)」を付け,L─アロイソロイシン,L─アロトレ
オニンと呼ぶ。より厳密には,L─イソロイシンは(2S, 3S),L─アロイソロイシンは(2S, 3R)と書く。
Cα Cβ H
H COOH
H2N
H3C
CH2
CH3
Cα Cβ CH3
H COOH
H2N
H
CH2
CH3
Cα Cβ OH
H COOH
H2N
H
CH3
Cα Cβ H
H COOH
H2N
HO
CH3
L─イソロイシン L─アロイソロイシン L─トレオニン L─アロトレオニン L─イソロイシン
(2S, 3S)
L─イソロイシン
(2S, 3R)
L─トレオニン
(2S, 3R)
L─トレオニン
(2S, 3S)
【2】 α─D─ヘキソース(六炭糖)は全部で8種類ある。αと指定されているのでC1以外のC2∼C4炭素に,ハ
ワース投影式で描いた六角面の上下いずれにヒドロキシ基が付くかの違いであり,23=8となる。その
うち,グルコース,ガラクトース,マンノースは図1.6に示されているので残りは5つである。次図に
はC2∼C4部分のみを示す。
H OH HO H OH H H OH HO OH H H HO OH H H OH H HO OH H OH H H HO H H OH H OH
D─アロース D─アルトロース D─グロース D─イドース D─タロース
【3】 ウリジル酸はウリジン5′─リン酸のことであり,UMPと略記される。ウリジンとシチジンはピリミジ
ン塩基であり,ウリジンはRNAのみに,シチジンはDNAのみに含まれる。
グアノシン ウリジル酸 シチジン
H OH OH O NH2 H H
O N N
NH N H HO H H OH OH H H O H O P O O− O O N NH H OH OH H H O H HO NH2 O N N − O
【4】 融点は液体⇒固体の凝固点でもある。飽和脂肪酸分子が概ね直線状であるのに対して,cis形で二重結 合を含む分子はその前後で屈曲した形態になり,結晶(固体)を形成する際のパッキングが良くなく, 結晶(固体)になりにくいからと考えられる。
【5】 多糖類では,糖鎖(通常環状構造をとっている)に付いているヒドロキシ基(─OH)の水素と酸素が,同
一分子間や他分子間で水素結合を形成し,らせん構造や平行構造の形成や安定化に寄与している。
タンパク質では,ペプチド結合を形成しているイミノ基(─NH─)の水素とカルボニル基(─CO─)の酸
素が同一分子間や他の分子との間でつくる─NH…O=C水素結合が,らせん構造や平行構造の形成に関
与するほか,側鎖にあるアミノ基,カルボニル基,ヒドロキシ基の間の水素結合が三次・四次構造の
形成・安定化にかかわっている。
核酸では,核酸塩基間の水素結合が遺伝情報の保持・発現の根幹をなしていると同時に,二重鎖構
造や核酸間の会合体を形成するもととなっている。
第
2
講
【1】 T1 T2=
V2 V1 ⎛ ⎝⎜ ⎞⎠⎟
γ−1
(2.19)
の関係があり,2原子分子の理想気体ではCV=(5/2)nR,CP=(7/2)nRなので,γ=CP/CV=7/5=1.4 である。したがって,V2/V1が2であれば,
V2 V1 ⎛ ⎝⎜ ⎞⎠⎟
γ−1
=20.4=1.32, T2=T1/1.32=0.76 T1
よって,元の温度の76%となる。
【2】 ΔH= C(P s)dT
T1
Tm
∫
+ΔHm+ T C(P l)dTm
Tv
∫
+ΔHv+ T C(P g)dTv
T2
∫
(2.21)であるが,CPは温度に依存しないと仮定しているので,積分の項はCP×温度差になり,
∆H=C(s)P (Tm−T1)+∆Hm+C(l)P (Tv−Tm)+∆Hv+C(g)P (T2−Tv)
とできる。C(s)P =75.4 J・mol−1・K−1,C(l)P =80.8 J・mol−1・K−1,C(g)P =35.1 J・mol−1・K−1,∆Hv°=23.5
kJ・mol−1,∆H
m
°=5.65 kJ・mol−1と与えられており,Tm=−77.7°C=195.15 K,Tv=−33.3°C=240.15 K,
T1=173.15 K, T2=273.15 Kなので,
∆H =75.4×(195.15−173.15)+5.65×103+80.8×(240.15−195.15)+23.5×103+35.1×(273.15−240.15)
=35603(J・mol−1)
したがって,35.6 kJ・mol−1。
水 の 場 合,C(P s)=35.0 J・mol−1・K−1,C(P l)=75.3 J・mol−1・K−1,C(P g)=36.1 J・mol−1・K−1,∆Hv°=
40.7 kJ・mol−1,∆H
m
°=6.01 kJ・mol−1と す る と,Tm=273.15 K,Tv=373.15 KでT1=−50°C=223.15 K,
T2=150°C=423.15 Kとされているので
∆H =35.0×(273.15−223.15)+6.01×103+75.3×(373.15−273.15)+40.7×103+36.1×(423.15−373.15)
=57795(J・mol−1)
【3】 メタノール(液体)の標準生成エンタルピーの測定値については幅があり,NIST(アメリカ国立標準技
術研究所)のデータブックでも−238.4から−251.3 kJ・mol−1まで示されている。表2.1では他のデータと
の関連から−239.1 kJ・mol−1を示したが,この問題では指定されている−238.42 kJ・mol−1を使う。
CH3OH(liq)+32O(gas)2 CO(gas)2 +2 H2O(liq)
CH3OH(liq):∆Hf°=−238.42 kJ・mol−1 CO(gas)2 :∆Hf°=−393.51 kJ・mol−1 H2O(liq) :∆Hf°=−285.83 kJ・mol−1
∆Hr°=∆H(f°CO2)+2∆H(f°H2O)−∆H(f°CH3OH)−(3/2)∆H(f°O2)
=−399.51+2×(−285.83)−(−238.42)−0=−726.75(kJ・mol−1)
したがって,−726.75 kJ・mol−1。
【4】 冷房は室内から室外への熱の汲み上げ,暖房は室外から室内への熱の汲み上げと単純に理解するのが 問題の主旨である。したがって,暖房の場合の効率は高温側に与えられる熱と加えた仕事の割合で,
図2.5の関係であるとすれば,
η=−w
q1=
q1+q2
q1 = T1−T2
T1 (2.38参照)
と書け,冷房の場合の効率は低温側から高温側に汲み上げる熱と加えた仕事の割合であり,
η′=q2
w = q2
−(q1+q2)=
T2
T1−T2 (2.40)
となる。それぞれ【暖房】T1=293 K,T2=283 K,【冷房】T1=308 K,T2=298 Kとすればよく,暖房の
場合はη= 10
293=0.0341,冷房の場合はη′= 298
10 =2.98になる。η′は熱効率というよりも成績係数であり,
ηの逆数は熱機関の成績係数といわれる。
【5】 CH3OH(liq)+32O(gas)2 CO(gas)2 +2 H2O(liq)
CH3OH(liq):∆Sf°=127.2 J・K−1・mol−1
O(gas)2 :∆Sf°=205.1 J・K−1・mol−1
CO(gas)2 :∆Sf°=213.7 J・K−1・mol−1
H2O(liq) :∆Sf°=70.00 J・K−1・mol−1
∆Sr°=∆S(COf° 2)+2 ∆Sf(H° 2O)−∆S(CHf° 3OH)−(3/2)∆Sf(O° 2)
=213.7+2×(70.00)−127.2−1.5×205.1=81.15(J・K−1・mol−1)
したがって,81.15 J・K−1・mol−1。
【6】 S =0+ C(P H2O,s) T dT 0
Tm
+ Hm
T +
C(P H2O, l)
T dT
Tm Tv
+ Hv
T +
C(P H2O, g) T dT
Tv
T2
(2.55)
のうち第3から第5項までの項(赤字)を使って計算する。CPを一定と仮定しているので,式(2.55)の積
∆S =∆Hm/273.15+C(l)P ・ln(373.15/273.15)+∆Hv/373.15
=6.01×103/273.15+75.3×0.289+40.7×103/373.15=154.5(J・K−1・mol−1)
したがって,154.5 J・K−1・mol−1。
【7】 A+BT+CT2 T dT
T1
T2
∫
をA,B,Cの項に分けると,
= A
TdT
T1 T2
∫
+ BTT dT
T1 T2
∫
+ CT2T dT
T1
T2
∫
となり,各項の積分をすると=Aln T2
T1
⎛ ⎝⎜
⎞
⎠⎟+B(T2−T1)+
1 2C(T2
2− T12)
となる。
第
3
講
【1】 NO(gas)+ CO(gas) CO(gas)2 + 12N(gas)2
CO(gas)2 :∆Gf°=−394.36 kJ・mol−1 N(gas)2 :∆Gf°=0
NO(gas) :∆Gf°=+86.57 kJ・mol−1
CO(gas):∆Gf°=−137.15 kJ・mol−1
から,∆Gr°=−394.36+0.5×0−86.57−(−137.15)=−343.78(kJ・mol−1)
したがって,343.78 kJ・mol−1。
【2】 lnP=−ΔH
RT +定数 (3.24) T1,T2で定数は同じなので,
定数= ΔH
RT1+
lnP1= ΔH RT2+
lnP2 (1)
lnP2−lnP1= Δ
H RT1−
ΔH
RT2 (2)
ln P2
P1 ⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟=−
ΔHv
R 1
T2−
1 T1 ⎛ ⎝⎜ ⎞ ⎠⎟ (3) 両辺の指数をとると
P2=P1exp −Δ
Hv
R 1
T2−
1 T1 ⎛ ⎝⎜ ⎞ ⎠⎟ ⎡ ⎣ ⎢ ⎤ ⎦ ⎥
となる。
∆Hvに44.0 kJ・mol−1,Rに8.314 J・mol−1・K−1を 入 れ,T1=373.15 K,T2=273.15 K∼373.15 Kま で5°C
刻みを入れて計算すると次のようなグラフになる。なお,図の赤点線…は文献にある精密な式を使っ
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
気圧
温度(°C)
630 hPaは0.622(=630/1013.25)気圧なので,上記グラフから沸点は90°C付近であることがわかる。
式(3)から
ln 0.622
1 ⎛
⎝ ⎞⎠=−0.475=−440008.314 1
T2−
1 373.15 ⎛
⎝⎜ ⎞⎠⎟
を解くと,T2=361.15 K=88°Cと計算される。なお,チョモランマ(エベレスト)の山頂(8848 m)では
300 hPaまで大気圧が低くなり,沸点は70°C程度になると計算される。
【3】 同体積なので,log Pow=1.96であれば水溶液中の濃度:オクタノール溶液中の濃度=1 : 101.96=1 : 91はそ
のまま含まれる物質量の比となる。したがって,溶媒2(オクタノール)に溶けている量は100×91/92=99 g
である。
log Pow=0.5であれば上記の比は1 : 3 : 16であり3.16/4.16=76%。1回目の残り24%の76%を2回目
で取り出せば,残りは5.8%,3回目では残り1.3%となり100−1.3>98で98%以上が取り出せたことに
なる(次図参照,
−−−
は残留量2%を表す)。0% 25% 50% 75% 100%
0.01% 0.1% 1% 10% 100%
0 1 2 3 4 5
抽出回数
回収量
(
)
残留量
(
)
もちろん,実際には分配が完全でなかったり,有機相のすべてを取り出せなかったりして,このよ うな計算どおりにはいかない。
【4】 データを整理すると以下の表のようになる。
T(°C) 5 10 20 30.5 44.5 50
T(K) 278.15 283.15 293.15 303.65 317.65 323.15
1000/T 3.595 3.532 3.411 3.293 3.148 3.095
K(M−1) 1630 1227 860 585 353 302
結果を見た段階で,温度が高くなると結合平衡定数が小さくなっていることから,発熱反応で∆Hrは 負であることが予想される。
1000/Tvs ln Kのプロットを描くと次図のようになる(1/Tでなく1000/Tにするのは,小数点以下の
桁を減らすだけでなく,勾配から∆Hrが直接kJで計算できるからでもある)。回帰直線(…:y=3.32x−
4.58)から求まる∆Hrは−27.6 kJ・mol−1となる。
5 6 7 8
3 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7
ln
K
1000/T
【5】 データを整理すると以下の表のようになる。
圧力(MPa) 0.1 25 50 75 100
K(M−1) 1050 1385 1780 2245 2860
ln K 6.955 7.233 7.484 7.716 7.959
結果を見た段階で,圧力が高くなると結合平衡定数が大きくなっていることから,∆Vrは負であるこ
とが予想される。
P vs ln Kのプロットを描くと次図のようになる。回帰直線(…)から得られた勾配は+0.00997であ り,−RTを乗じると∆Vr=−24.7 mL・mol−(mL1 =10−3L=10−3dm3)が得られる。
6.8 7.0 7.2 7.4 7.6 7.8 8.0 8.2
0 25 50 75 100
ln
K
P(MPa)
第
4
講
【1】 (i)水溶液中の水はモル濃度にすると1000/18=55.6 Mとみなせる。したがって,窒素ガスのモル分
率は5.4×10−4/(5.4×10−4+55.6)
5.4×10−4/55.6=9.7×10−6となる。
(iii)PN2=kXN2でPN2=8.8,k=8.2×104,XN2=1.1×10−4となる。
(ここでは水の圧縮は考えていないので水の濃度は同じだが,窒素の溶解量が増えるので,XN2は昇圧
により大きくなる。)
この問題では,空気は窒素と酸素だけから,血液は水と窒素,酸素だけからなっていると考えて解 答する。
【2】 mB=1であるから∆TmKmmB,∆TvKvmBはそのまま∆Tm=Km=1.86 K,∆Tv=Kv=0.512 Kとなる。 浸透圧についてもΠ=RTとなり,Rを気圧・体積単位で書けば8.21×10−2 dm3・atm・K−1・mol−1である
ので,T=298 Kならば24.5気圧となる。
mB=0.01であればそれぞれの値は1/100になり,∆Tm=0.0186,∆Tv=0.00512,Π=0.245となる。66
頁のColumnで示したように,mB=0.01での∆Tm,∆Tvの値は測定が困難であるが,Pは186 mmHgで
あり,十分測定できる。
一方,分子量1万の物質1 mol・kg(溶媒)−1というのはほぼ1 dm3(=1 L)の水に物質10 kgを溶かす
ということであり,現実的ではない。0.01 mol・kg(溶媒)−1でも100 gを溶かさなければならず,希薄
溶液という想定を超えている。実際にはもう1桁は下げなければならず,浸透圧法でしか測れない。
【3】 Km= RTm
2M A
ΔHm・1000
(4.18), Kv= RTv
2M A
ΔHv・1000
(4.19)
を書き直せば,
ΔHm=
RTm2MA
Km・1000, ΔHv=
RTv2MA
Kv・1000
となるので,各数値を代入すると以下の表のようになる。
沸点上昇
M
A Tv(K) Kv(K・kg・mol−
1) H v=RTv
2M A
Kv・1000
(kJ・mol−1)
ベンゼン 78.11 353.3 2.53 32.0 酢酸 60.05 391.3 3.07 24.9
シクロヘキサン 84.16 353.9 2.75 31.9
水 18.02 373.2 0.512 31.1
凝固点降下
分子量MA Tm(K) Km(K・kg・mol−1) Hm=
RTm2MA
Km・1000
(kJ・mol−1)
ベンゼン 78.11 278.7 5.12 9.8 酢酸 60.05 289.8 3.9 10.7
シクロヘキサン 84.16 279.7 20 2.7
水 18.02 273.2 1.86 6.0
【4】 1価アニオン・1価カチオンの電解質ではc+=c−=cであり,
I=1
2 cizi
2=1
2(c+×1+c−×1)=c
∑
からイオン強度Iは塩の濃度と同じになる。したがって,log γi=−0.509zi2 Iは−0.509 cとなり,
γ(Na+でもCl−でもγiの計算値は変わらず,平均イオン活量係数とも一致する)は以下の表のように計
濃度(M) 0.001 0.005 0.01 0.05 0.1
γ測定値
Na+ 0.964 0.928 0.902 0.820 0.780
Cl− 0.964 0.925 0.899 0.800 0.760
γ計算値 0.964 0.920 0.889 0.769 0.690
0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 濃度(M)
γ
●γ(Na+),●γ(Cl−),●γ(計算値)
この例では,非常に低い濃度ではほぼ一致しているが,濃度が高くなると計算値の方が小さくなって いる。
【5】 簡潔にいうと,イオンの水和の強弱はイオン半径付近での電場の強さとイオン球の拡がりに関係する。
2価の陽イオンの方が1価の陽イオンよりも(同じ周期では)電場が強くなりイオン半径は小さく,水和
によるエンタルピー変化も負に大きい。1価のイオンでは負イオンの方が若干イオン半径は大きいが,
概ねその状況は似ており,グラフで見ると近接している。
水和エントロピーは主に水分子の自由度が下がることに起因するが,水和量が多いほどエントロピー 変化は負に大きくなるが,水和によるエンタルピー的な安定化の方が大きく,水和が起こる。(より厳 密には結晶状態でのエネルギーとの比較で説明しなければならないが,割愛する。)
第
5
講
【1】 [H+]=1
2 Ka
2+4K a
[HA]0−Ka
(
)
(5.12)に[HA]0=0.1,pKa=1∼7を入れるとそれぞれ以下の表のようになる。
pKa 1 2 3 4 5 6 7
K(M)a 10−1 10−2 10−3 10−4 10−5 10−6 10−7
[H+](M) 6.18×10−2 2.70×10−2 9.51×10−3 3.11×10−3 9.95×10−4 3.16×10−4 1.00×10−4
pH 1.21 1.57 2.02 2.51 3.00 3.50 4.00
0
1.0 2.0 3.0 4.0
1 2 3 4 5 6 7
pH
pKa
【2】[H+]=K([a HA]0−[Na
+]−[H+])
[Na+]+[H+] (5.16) の右辺分母を左辺に移して整理すると
[Na+][H+]+[H+]2=K([a HA]0−[Na+])−Ka[H+] [H+]2+([Na+]+Ka)[H+]−K([a HA]0−[Na+])=0
とできる。二次方程式ax2+bx+c=0の一般解
x=−b± b 2−4ac
2a
において,
x=[H+], a=1, b=[Na+]+Ka, c=−K([a HA]0−[Na+])。
b2−4c=([Na+]+Ka)2+4K([a HA]0−[Na+])=([Na+]−Ka)2+4K[a HA]0≡Q とすると,
[H+]={─([Na+]+Ka)± Q}/2
(「−」の方とすれば[H+]<0となるので,符号は+) となる。したがって,
[H+]={─([Na+]+Ka)+ Q}/2
この式を用いて,縦軸をpHとして[Na+]=0∼0.2の範囲でグラフにすると次のようになる。
2 3 4 5 6 7
0 0.05 0.1 0.15 0.2
pH
[Na+](M)
【3】 pH=pKa+log α
1−α
⎛
⎝⎜ ⎞⎠⎟ (5.7)
α= 10
pH−pKa
1+10pH−pKa
となる。問題文のペプチドは21 merだが,含まれている側鎖解離性アミノ酸はArg(1),Lys(5),Glu(3)
の3種類9残基であり,これに末端 ─NH3+と─COOHが加わる。それぞれのpKaは表5.2と問題文から
Arg(12.48), Lys(10.28), Glu(4.25), ─NH(8.0)3 , ─COOH(3.1)なので,これらをα=10pH−pKa/(1+10pH−pKa) に入れてpH 4, 7, 10について計算すると以下の表のようになる。
【4】 荷電性アミノ酸残基の表を一見しただけで,塩基性アミノ酸21,酸性アミノ酸9と大きく塩基性アミ
ノ酸が多いので,塩基性タンパク質であることは理解できる。計算手法は【3】と同様であるが,報告さ
れているpI値との比較という点が異なる。前問と同様に遊離アミノ酸側鎖のpKaを用いて解離度を計
算し,酸性残基は解離型を−1に塩基性残基は非解離型を+1として,それぞれの残基数を乗じて総計
し全体の電荷数を得る。pHを変化させる場合,まず表5.5にあるpI値を入力して負であれば高pHに,
正であれば低pHにずらして計算する。グラフにすると次図のようになるが,遊離アミノ酸の値を使っ
たこの計算では,pI値は12.6ぐらいになるが,実測値は11強程度である。
−8
−4 0 4 8
10 11 12 13 14
電荷数
pH
アミノ酸 数 pKa pH 解離度 荷電数
Arg 1 12.48
4 1.0 1.0
7 1.0 1.0
10 1.0 1.0
Glu 3 4.25
4 0.36 −1.08
7 1.0 −3.0
10 1.0 −3.0
Lys 5 10.28
4 1.0 5.0
7 1.0 5.0
10 0.66 3.28
─NH3 1 8
4 1.0 1.0
7 0.91 0.91
10 0.01 0.01
─COOH 1 3.1
4 0.89 −0.89
7 1.0 −1.0
10 1.0 −1.0
総 数
4 5.03
7 2.91
【5】 基本的には,塩基間水素結合の水素供与部分から水素イオンが解離してしまうと,通常の水素結合が 形成できなくなり,逆に水素受容部分に水素イオンが結合してしまっても同様である。また直接水素 結合の形成に関与していなくても他部分で水素イオンの脱着が起こると塩基環内での共鳴性に変化が 生じ,水素結合形成に影響を及ぼす。
例えばグアニン(N─1),チミン(N─3),ウラシル(N─3)では表5.3にあるようにpKaが9.5∼10で水素
イオンが解離するので,水素結合対ができなくなる。したがって,DNA二重鎖はpH 10程度以上で変
性(解離)する。また,G─C間の水素結合もpH 4以下では変化を受ける。さらに,pH変化で直接塩基
対が崩れなくても,温度依存性などは異なってくる。
第
6
講
【1】 β=γB,micelle
[B]micelle [B]aq
=exp −µB,micelle
! −µ
B,aq
!
RT
⎛ ⎝
⎜ ⎞
⎠
⎟ (6.8) を
β γB,micelle=
[B]micelle [B]aq =
exp −µB,micelle
! −µB,!aq RT
⎛ ⎝
⎜ ⎞
⎠ ⎟
とすると,
ln β γB,micelle
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟=−
µB,micelle! −µB,aq! RT
になるので,
µB,!micelle−µB,!aq=−RTln β γB,micelle
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟
RT=8.314 J・K−1・mol−1×298.15 K=2.48 kJ・mol−1より, γB,micelle=1の場合
SDS:β=1.40×103なら,µ
B,micelle−µB,aq=2.48×ln(1.4×103)=−18.0 kJ・mol−1
DTAB:β=1.70×103なら,µ
B,micelle−µB,aq=2.48×ln(1.7×103)=−18.4 kJ・mol−1 γB,micelle=0.7の場合
SDS:β/γB,micelle=1.40×103/0.7=2.00×103なら,µ
B,micelle−µB,aq=2.48 ln(2.00×103)=−18.9 kJ・mol−1
DTAB:β/γB,micelle=1.70×103/0.7=2.43×103なら,µ
B,micelle−µB,aq=2.48 ln(2.43×103)=−19.3 kJ・mol−1 いずれもγB,micelleはRT ln 0.7=0.88 kJ・mol−1の差になる。
【2】[νL]=K(n−ν) (6.13)
を使ってグラフを作成する。与えられたデータからν/[L]を計算し,ν/[L] vs νをプロットする(µM
=1×10−6 M)。
[L](µM) 5.5 17 28 40 50 60 82 125
ν(µM・g(タンパク質)−1) 100 225 285 330 360 390 421 458
ν[/ L] 18.18 13.24 10.18 8.25 7.20 6.50 5.13 3.66
作業に入る前に,[L] vs νのプロットを作ってみると次図のようになり,νの飽和値が500ほどであ
0 100 200 300 400 500
0 50 100 150
[L](µM)
ν
得られるスキャッチャード・プロットは次図左のようになる。回帰直線からν=−24.5ν/[L]+542
となり,縦軸切片から最大結合量νmax=542(μM・g(タンパク質)−1),傾きからK=24.5(μM−1)が得ら れる。
ク ロ ッ ツ・プ ロ ッ ト は1/[L] vs 1/νな の で 次 図 右 の よ う に な る。 回 帰 直 線 か らν=0.0448×
(1/[L])+0.00185となり,縦軸切片は1/νmax,傾きは1/(νmax・K)であるので,νmax=540(μM・g(タ
ンパク質)−1),K=24.2(
μM−1)と得られる。
1/[L] 0.182 0.0588 0.0357 0.0250 0.0200 0.0167 0.0122 0.00800
1/ν 0.0100 0.00444 0.00351 0.00303 0.00278 0.00256 0.00238 0.00218
0 100 200 300 400 500
0 5 10 15 20 0 0.05 0.1 0.15 0.2
[L]
スキャッチャード・ プロット
0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012
1/[L] クロッツ・プロット
ν 1/ν
両プロットを比較すると若干値が異なるが,ほぼ一致している。それ以上のことはPart 4で解説し
ているので省略する。
【3】 ν= nK[′ L]n
1+K[′ L]n (6.20a) から
θ=νn= K[′ L]n
1+K[′ L]n
である。また,K1=K2=K3=K4=K5=10(M5 −1)よりKn′=1=105, Kn′=2=1010, Kn′=3=1015, Kn′=4=1020, Kn′=5=1025(M)である。K1−(M)の1/101 ∼50倍の範囲で[L]を設定してθを使ってグラフを作成すると,
0
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
10−6 10−5 10−4 10−3 [L](M)
θ
【4】 表の値をそのままプロットすると次図左のようになるが,60°Cと65°Cおよび88°Cと90°Cでは吸収強
度の変化がないので,強度0.16から0.85の範囲で変化する(解離度α=0で0.16,α=1で0.85)と考えて
算出したαは以下の表の3列目のようになり,グラフは次図右のようになる。
温度(°C) 60 65 70 72 74 76 78 80 82 85 88 90
吸収強度 0.16 0.16 0.17 0.22 0.32 0.48 0.65 0.75 0.80 0.84 0.85 0.85
α 0 0 0.014 0.087 0.232 0.464 0.710 0.855 0.928 0.986 1 1
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
吸収強度
温度(°C)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1
温度(°C)
α
55 60 65 70 75 80 85 90 95 55 60 65 70 75 80 85 90 95
この図でα=0.5となる温度を読み取れば76°C強となる。近似曲線を使って計算で得るとすれば(低
温・高温の両端から3つの測定点をはずして)72°C∼82°Cの結果からlog[α/(1−α)]を算出し,温度に
対してプロットを行うと,
log[α/(1−α)]=0.213×温度−16.4
という回帰直線(…)が得られ,α=0.5で左辺は0なので,Tm=16.35/0.213=76.6(°C)となる。
温度/°C log[α(/ 1−α)]
72 −1.021
74 −0.520
76 −0.0630
78 0.389
80 0.771
82 1.107
0
0.5 1.5
70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 −1.5
−1.0 −0.5
温度(°C)
log
[
α
/
(
1
−
α
図からわかるように,測定点は若干上に凸の変化をしている。そこで二次曲線近似を行ってみると, 回帰曲線はlog[α/(1−α)]=−0.00502×温度2+0.987×温度−46.1(…)であり,測定点に近くなる。こ
れを解くとTm=76.4°C程度である。
【5】 濃度依存性の結果から,ln ctotalと1000/Tmは以下の表のようになる。
濃度(μM) 5.76 10.5 19.9 26.6 48.0 73.8 158 258 470
Tm(°C) 44.8 46.4 47.9 49.0 50.5 51.6 53.1 54.1 55.3
ln c
total −12.06 −11.46 −10.82 −10.53 −9.94 −9.51 −8.75 −8.26 −7.66
1000/Tm 3.145 3.129 3.115 3.104 3.090 3.079 3.065 3.056 3.045
式(6.27b)に基づいてln ctotal vs 1000/Tmのプロットを作成して直線回帰を行うと,
3.04 3.06 3.08 3.10 3.12 3.14 3.16
−14 −12 −10 −8 −6
1000/
Tm
ln ctotal
1/Tm=−2.299×10−5・ln ctotal+0.002846(…)が得られる。式(6.28b)から
1
Tm = R
ΔH!lnctotal+ ΔS! ΔH!
であるので,勾配=R/∆H°=−2.30×10−5,∆H°=−8.314/(2.30×10−5)=−3.61×105=−361 kJ・mol−1。 縦軸切片×∆H°=∆S°=(−2.85×10−3)×(3.61×105)=−1030 J・K−1・mol−1と得られる。
これらの熱力学量は2A A2の会合方向の値であることに注意。会合することによって∆S°は減少
するが,∆H°が負なので標準状態では会合が起こる。高温になれば−T∆S°が大きくなり,会合反応の
∆Gは正となり,会合は起こらない。
第
7
講
【1】 実際に起こっている現象はかなり複雑であるが,電気が流れる前の状況で,単純に鉄から銅へ電子が 移動するポテンシャルを考えると,標準電極電位の値
Fe2++2e− Fe −0.440 V Cu2++2e− Cu +0.340 V
から,0.780 Vとなる。
【2】 フルクトース─6─リン酸+ATP フルクトース─1,6─ビスリン酸+ADP ∆G*=−14.2 kJ・mol−1
ADP+Pi ATP ∆G*=30.5 kJ・mol−1
【3】(1)NAD++2 H++2e− NADH+H+ E*=−0.320(V) (2)ピルビン酸+2 H++2e− 乳酸 E*=−0.185(V)
(1)の左向きの反応NADH+H+ NAD++2 H++2e−と(2)の右向きの反応を組み合わせると, E*=+0.320+(−0.185)=+0.135(V)
∆G*=−nF∆E*=−2×96485×0.135=−26.1(kJ・mol−1)
Keq=exp −
G* RT =exp
×1000
8.314×298.15 = ×10
4 26.1
3.74
G− G*=−RTln [乳酸]
[ピルビン酸]・[NAD +] [NADH]
=−8.314×298.15×ln 2.9
0.05×1.5 =−11.1(kJ・mol −1)
より,∆G=−11.1−(26.1)=15.0(kJ・mol−1)。∆G>0なので,反応はピルビン酸生成側に進む(図3.7参 照)。
【4】 タンパク質や多糖の生合成では,モノマー単位にATPやUTPが反応してNDP体を作り,それが重合
していく。核酸の生合成では,モノマー単位であるヌクレオチドそのものが高エネルギー化合物であり, すでに「活性化」された状態にある。
第
8
講
【1】[A]=[A]0 e−k1t (8.8)
の減衰曲線に従うとすると,血中濃度は次図左の
───
の和に沿った―
のように推移する。各回の最大値を結んだ曲線も同じ半減期をもって(1回目の服用直後の濃度の)1倍から2倍に漸近する(―)。
実際には服用後に血中に溶け込むまでの時間は(直線的な立ち上がりではなく)指数的な増加過程に
なるので,式(8.35)のように2つの指数関数的変化が重なる。1回の服用については,模式的には次図
右のようになる。
0
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 1 2 3 4 5 6 7
時間(半減期の倍数)
血中濃度 血中濃度
時間
【2】([A] d[P]
0−[P])([B]0−[P])=
k2dt (8.21)
で[A]0=a,[B]0=b,[P]=xとおけば,左辺は dx
(a−x()b−x)となる。この式の積分式は公式集などに
( 1
a−x()b−x)=
1
b−a
1
x−a−
1
x−b
⎛
⎝⎜ ⎞⎠⎟
と部分分数にすると
∫
dx(a−x()b−x)=
1
b−a(log|x−a|−log|x−b|)+C
と な る。|x−a|, |x−b|はa>x, b>xな の で(a−x), (b−x)に 替 え ら れ る。Cはt=0, x=0で[A]=a, [B]=bであることから,
− 1
b−a(loga−logb)=−
1
b−alog a b
⎛ ⎝ ⎞⎠=
1
b−alog b a
⎛ ⎝ ⎞⎠
1
b−a{log(a−x)−log(b−x)}+
1
b−alog b a
⎛ ⎝ ⎞⎠=
1
b−alog a−x b−x・
b a
⎛
⎝⎜ ⎞⎠⎟ である。a, b, xを[A]0,[B]0,[P]に戻せば,式(8.22)になる。 【3】 式(8.22)などでA≡H2,B≡I2とすると,
v=k[2 I2[]H2], k2t=
1
[I2]0−[H2]0
ln[I2]
[H2]・ [H2]0
[I2]0
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟
[H2]0=2.5 M,[I2]0=1.0 Mであれば[H2]0/[I2]0=2.5,[I2]0−[H2]0=−1.5 M。ln([I2]/[H2])を計算す ると以下の表のようになる。
時間(秒) 10 25 50 75 100 150 200
[I2](M) 0.699 0.436 0.218 0.116 0.063 0.019 0.0060 [H2](M) 2.199 1.936 1.718 1.616 1.563 1.519 1.506
ln([I2][H/ 2]) −1.146 −1.491 −2.064 −2.634 −3.211 −4.381 −5.525
tvs ln([I2]/[H2])のプロットを描くと,傾きからk2が得られる。グラフは次図のようになり,回帰
直線(…)はy=−0.0231x−0.911となる。勾配は([I2]0−[H2]0)・k2=−0.0231なのでk2=0.0154(M−1・s−1)
と求まる。
−6 −5 −4 −3 −2 −1 0
0 50 100 150 200
時間(t 秒)
ln ([ I2 ] / [ H2 ])
式(1)よりK1=[I]2/[I2] [I]2=K[I1 2]
式(2)よりK2=[H2I]/([I][H2]) [H2I]=K[I]2 [H2]
式(3)からv=(1/2)d[HI]/dt=k[I]2′ [H2I]
式(3)に式(2)の[H2I]を代入するとv=k2′K2[I][H2 2]。さらに式(1)の[I]2を代入すると I2
K1
2 I (1)
(2) (3) I+H2
I+H2I K2
H2I
2 HI
v=(k2′K1K2)[I2][H2]
となる。( )内を改めてk2″とおくと,v=k2[″ I2][H2]となり,2つの反応物濃度に比例する速度式となる。 少し簡略化した反応機構として
I2
K1
2 I (1)
(2)
2 H+H2 2 HI
k′2
というものも考えられる。この場合,式(1)は上と同様で式(2)からv=(1/2)d[HI]/dt=k2[′ I][2 H2]と なり,[I]2=K
1
[I2]を代入すると,
v=k2′K[1 I2][H2]
となり,k2′・K1=k2″とみなすことで2つの反応物濃度に比例する速度式になる。これらいずれの場合も,
H2Iの存在などを(分光学的方法など)何らかの方法で明らかにしない限り,反応速度の(反応物)濃度
依存性だけでは反応機構を絞り込むことはできない。
【4】 アレニウス・プロットでは1/T(K)vs ln vのプロットを描くので,それらをまず計算する。答えをkJ
単位で得るために,あらかじめ横軸を1000/T単位にしておくことがしばしば行われる。
温度T(°C) 15.0 20.1 25.6 34.1 43.5
反応速度定数k(s−1) 25.8 35.9 53.0 85.6 138.4
1000/T 3.47 3.41 3.35 3.25 3.16
ln k 3.25 3.58 3.97 4.45 4.93
グラフは次図のようになる。直線回帰(…)を行うと,y=−5.40x+22.0という式が得られるので,活
性化エネルギーEaは5.40×8.314=44.8(kJ・mol−1)となり,頻度因子Aはe22で3.58×109(s−1)と計算さ
れる。頻度因子を反応物質の衝突と解釈すれば,0.3ナノ秒に1回起こっていることになる。∆H‡につい
ては,凝集系の反応と理解してEa=∆H‡+RTから,Ea=44.8であれば,∆H‡=44.8−8.314×298.15/1000 =42.3(kJ・mol−1)となる。
2.00 3.00 4.00 5.00 6.00
3 3.2 3.4 3.6
ln
k
1000/T
【5】
圧力(MPa) 0.1 25.2 50.1 74.8 99.9
反応速度定数k(s−1) 7.0 9.4 13.9 21.8 29.7
圧力P(MPa)に対してln kをプロットすると次図のようになる。
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
0 20 40 60 80 100
ln
k
P(MPa)
直線回帰(…)で勾配を求めるとy=0.150x+19.1から,−∆V‡/RTは0.150であり,活性化体積∆V‡に直 すと,−0.150×RT=−37.2 mL・mol−1と計算できる。
第
9
講
【1】 直角双曲線なので,漸近線はy軸に平行のものとx軸に平行のものになる。後者はv=Vmaxと与えられ
ているが,y軸に平行の方は同式で[S]=−Kmであれば分母が0となり([S]が負なのでマイナス方向に)
発散してしまう。したがって,[S]=−Kmという直線である。
模式的に描けば次図のようになる(横軸はKmで,縦軸はVmaxで除してある)。
1.5
1.0
0.5
0
3 8
−0.5 −2
[S]/Km
v
/
Vmax
【2】 Kmとkcatは酵素濃度によらない。もちろん酵素濃度を高く(濃く)すると酵素同士が相互作用して,機
能に変化が出るような場合は,別である。一方Vmaxはkcat×[E]0なので,酵素濃度に比例する。
【3】 必要な変数の計算をすると以下の表のようになる。
[S]0(10−3 M) 0.17 0.32 0.47 0.61 0.76 1.02 1.28 1.72
v=vobs[/ E]0(s− 1)
37 56 67 78 87 98 105 115
1/[S]0 5.88 3.13 2.13 1.64 1.32 0.980 0.781 0.581
1/v 0.0270 0.0179 0.0149 0.0128 0.0115 0.0102 0.00952 0.00870
プロット 横 軸 縦 軸 傾 き 縦軸切片
L─B 1/[S]0 1/v Km/Vmax 1/Vmax
E─H v/[S]0 v Km Vmax
H─W [S]0 [S]0/v 1/Vmax Km/Vmax
それぞれのプロットは次図のとおりであり,直線の傾きから計算されるKm,Vmax/[E]0=kcatは以下の
表のようになる。
プロット Km(mM) Vmax[/ E]0=kcat(s−
1)
L─B 0.49 143
E─H 0.52 147
H─W 0.56 151
ある程度の質をもった測定結果であるが,3つのプロットで異なる数値となっている。これは濃度 領域のどのあたりがプロットに大きな影響を与えるかによる。
0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014 0.016 0.018
0 0.5 1 1.5 2
[S]
0 0.5 1 1.5 2
[S]
0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030
0 1 2 3 4 5 6 7
1/[S] 0
20 40 60 80 100 120 140
実験結果
0 40 80 120 160 200
0 50 100 150 200 250 300
1/
v
v
v
[
S
]
/
v
L─Bプロット
E─Hプロット H─Wプロット
v/[S]
【4】 上記グラフにvを105%(●)と95%(●)にした値を描き加えてある。
L─BプロットとH─Wプロットでは(数式から当然であるが)縦軸方向にのみ誤差の拡がりが見られ
るのに対して,E─Hプロットでは縦・横双方に誤差が拡がり,誤差バーは原点からの直線上( )に分
布する。また,同じ割合で作成した誤差でもプロット上の誤差バーの大きさが異なって見えることに 着目されたい。
【5】 Vmaxt=−Kmln[
S]
[S]0
⎛ ⎝⎜
⎞
⎠⎟−([S]−[S]0)=Kmln [S]0
[S] ⎛ ⎝⎜
⎞
⎠⎟+([S]0−[S])
Vmaxt=1×10−3×ln(1/0.95)+(0.5×10−3)
t=5 min=300 sなので,Vmax=1.84×10−6 M・s−1。この値を使って[S]=0.5×[S]0=5 mMのときのtを
計算すると
t50%={1×10−3×ln(1/0.5)+(5×10−3)}/1.84×10−6=3.10×103 s=51.7 min
となる。基質の減少量が0から95%まで5%刻みおよび99%として到達時間tを計算し,その結果を用
いてt vs基質残存量のプロットを作成すると次図
―
のようになる。この問題では,[S]0がKmに対して大きいので,反応が35%程度進行するまでは基質過剰仮定で計
算した値(
──
)とあまり変わらないが,反応がさらに進むと違ってくる。また,[S]0がKmと同等程度の設定である場合は,反応の進行が10%未満でないと基質過剰仮定は成立しない。
0
0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012
0 25 50 75 100 125 150
[
S
]
時間(min)
【6】 これは単純な計算問題で,各値を式(9.26a),(9.26b)に入れればよい。
反応パラメータ k2 k3 KS′
単位 s−1 s−1 mM
値 360 29 0.8
Km=0.0596 mM,kcat=26.8 s−1
同じ中間体なのでアミド基質とエステル基質でのk3は29 s−1と同じ値になる。「観測できなかった」の
は,k2がk3よりかなり小さいからである。したがって,kcatk2,KmKS′となる。
第
10
講
【1】 Km=K(S 1+[H
+]/K
a1+Ka2[/ H+])
1+[H+]/Ka1′+Ka2′/[H+]
(10.6c)
の両辺をKSで割ると
Km
KS =
1+[H+]/Ka1+Ka2[/ H+]
1+[H+]/Ka1′+Ka2′[/ H+]
0 2 4 6 8 pH
0
2 4 6 8
Km
/
KS
Km/KSは[H+]が非常に大きければKa1/Ka1′ に漸近し,[H+]が非常に小さければKa2′/Ka2に漸近する。
この例の場合,それぞれ7.94, 3.98になる。容易に理解できるように,Ka1とKa1′ が離れているほど
Km/KSのpH依存性は大きくなる。
【2】 図10.6に示したグラフ(ほぼ直線)を見ると,カルボキシペプチダーゼY(●)では100 MPaの圧力変化で
ln(kcat/Km)は9.3程度から7.5程度にまで小さくなっている。一方,サーモライシン(●)では,同じ圧
力変化で8.7程度から10.1程度にまで大きくなっている。したがって
(∂ ln∂k2)
P
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟T=
∂
(lnK‡)
∂P
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟T=−
ΔV‡
RT (8.46)
より,図の傾きにRTを乗じて∆V‡は
カルボキシペプチダーゼY:─{(7.5−9.3)/100}×(8.314×298.15)=45(mL・mol−1) サーモライシン:─{(10.1−8.7)/100}×(8.314×298.15)=−37(mL・mol−1)
となる。
【3】 赤字が空欄を埋めたところ。
阻害の形式 見かけのKm(app) 見かけのVmax(app)
阻害剤なし Km Vmax
競争阻害 阻害剤は遊離の酵素にのみ結合 1+[KIm]/K
I Vmax
非競争阻害 non-competitive
阻害剤は遊離の酵素とE・Sに
同じ強さでの結合 Km
Vmax
1+[I]/KI 不競争阻害
uncompetitive 阻害剤はE・Sにのみ結合
Km
1+[I]/KI
Vmax
1+[I]/KI
混合型 阻害剤は遊離の酵素にも基質酵素複合体にも結合 ・ Km(1+[I]/KI) 1 Vmax
+[I]/ KI
【4】 3つの阻害形式
競 争 阻 害:v= kcat[E]0
1+KS(1+[I]/KI)[/ S](10.9)
非競争阻害:v=k[2 E]0(/ 1+[I]/KI)
1+KS/[S]
(10.11)
不競争阻害:v= k[2 E]0
について異なる[I]でE─Hプロットを作成すると図のようになる。阻害剤を増やすと
―
(阻害剤なし)か ら矢印の方向に変化する。v
非競争阻害
競争阻害 不競争阻害
v/[S]
v
v/[S]
v
v/[S]
競争阻害では縦軸交点が一致し,不競争阻害では横軸交点が一致する。また非競争阻害ではグラフ が平行に移動する。
E─Hプロットでは,縦横両軸に「v」が含まれている。したがって,以下のことがいえる。
・競争阻害では,Vmaxには阻害剤の存在が影響を与えないので縦軸の切片は同じであり,前問の表か
らわかるように[I]の増加は見かけのKm(app()=プロットの傾き)を大きくする。
・ 非競争阻害ではKm(app)は影響されないのでプロットは平行になる。vへの影響だけ縦横双方の切片
が小さくなる。
・ 不競争阻害ではKmとVmaxの双方に同じだけの影響が出るので,横軸の切片(Vmax/Km)は阻害剤の影
響は受けないが,傾きが[I]の増加とともに大きくなり,縦軸切片は小さくなる。
【5】 競争阻害では[3]の表のようにKm(app)=Km(1+[I]/KI)となる。この場合,グラフ解析によって得られ
た[I] vs Km(app)をプロットすると次のようなグラフが得られる。
0 5 10 15
0 1 2 3 4 5
[I]
Km(
app
)
縦軸切片はKmで傾きが1/KIなので,傾きの逆数がKIである。(このグラフ例ではKI=0.5:単位任意)
別の考えとして,基質濃度を一定にして阻害剤濃度の変化に対するグラフを見ることもある。式(10.9) から始めると(kcat[E]0=Vmax)
1
v=
1+K(S 1+[I]/KI)[/ S] Vmax =
KS
Vmax
1+[I] KI
⎛
⎝⎜ ⎞⎠⎟・ 1
[S]+ 1 Vmax
となるので,[I] vs 1/vのプロットを異なる[S]に対して描くと,複数の直線が1点で交差する(次図,
[S]1
[S]2
[S]3
1/
v
−KI [I]
【6】 式(9.21)の形式をとる加水分解酵素の反応は,例えばトリプシンの反応のように,基質の一部(基質
A─BのA)が酵素に共有結合してE─Aを作り,Bが先に生成した後にAが水に移るといったものである。
より具体的には,基質であるタンパク質を形成しているペプチド結合P1─NH
─
CO─P2のNH─
CO間結合を分解するために,まずCO─P2が酵素のセリン残基(E─OH)とエステル(E─O─CO─P2)を形成し
P1─NH2が生成する。その後セリンエステルは水H2Oと反応し,HOCO─P2が2番目の生成物となる。
この過程を反応式にすれば
第1段階:P1─NH─CO─P2+E─OH E─O─CO─P2+P1─NH2 第2段階:E─O─CO─P2+H2O E─OH+HOCO─P2
であり,クリーランド方式で示すと
P1─NH
─
CO─P2 P1─NH2 H2O HOCO─P2E─OH E─O
─
CO─P2 E─OHとピンポンBi Bi形式に描ける。
第
11
講
【1】 波長がλである光子1つのエネルギーは
E=hc
λ (11.5)
で表される。ここで,プランク定数はh=6.63×10−34 J・s,光速はc=3.00×108 m・s−1であるので,
λ=200 nm=200×10−9 mの場合
E=(6.63×10
−34J・s)×(3.00×108m・s−1)
200×10−9m =9.95×10
−19J
λ=900 nm=900×10−9 mの場合
E=(6.63×10
−34
J・s)×(3.00×108m・s−1)
900×10−9m =2.21×10
−19J
となる。
一方,波長がλである光子1 molのエネルギーは式(11.7)から
E=NA
hc
λ
10−9 mの場合
E=6.02×1023 mol−1×9.95×10−19 J=599 kJ・mol−1
λ=900 nm=900×10−9 mの場合
E=6.02×1023 mol−1×2.21×10−19 J=133 kJ・mol−1
となる。波長が200 nmである紫外線の光子1 molのエネルギーは分子の結合解離エネルギー(表11.1)
よりも大きいので,紫外線には物質を分解する能力がある。したがって,紫外線には殺菌能力がある。
一方,赤外線の光子1 molのエネルギーは結合解離エネルギーより小さいが,振動エネルギー(177頁
参照)よりも大きいので,物質の温度を上げる働きがある。
【2】 図11.5に可視光の波長と波長に対応する色について述べた。ヘモグロビンに白色光を照射した場合,
400∼450 nm, 500∼600 nmの波長の光が吸収されるので,透過する光の波長は主に600∼800 nmとな
るが,この光は赤色である。したがって,ヘモグロビンは赤色に見える。
【3】 (i)長さ2.0 Åの一次元の箱に閉じ込められた電子のエネルギーは,シュレーディンガー方程式を解く
ことにより,式(11.21)のように得られる。
En= h
2n2
8ma2 (11.21)
ここで,nは自然数,各定数はa=2.0 Å=2.0×10−10 m,m=9.11×10−31 kg,h=6.63×10−34 J・sである。
もっとも低い(n=1)エネルギーは
E1= (
6.63×10−34J・s)2×12
8×(9.11×10−31kg)×(2.0×10−10m)2=1.51×10
−18
J
2番目に低い(n=2)エネルギーは
E2= (6.63×10
−34
J・s)2×22
8×(9.11×10−31kg)×(2.0×10−10m)2=6.03×10
−18J
となる。
(ii)(i)からE1からE2への励起エネルギーは
ΔE=E2−E1=4.52×10−18J
となる。エネルギーと波長の関係は
E=hc
λ (11.5)
で与えられるので,励起エネルギーに対応する電磁波の周波数は
λ=Δhc
E=
(6.63×10−34J・s)×(3.00×108m・s−1)
45.2×10−19J =44.0 nm
第
12
講
【1】 吸光度をlog(I0/I)=A,溶質の濃度をc(mol・dm−3),光路長を(cm)とおくと,ランベルトl ・ベール
の法則から
A=εcl (12.4)
と書ける。ε(M−1・cm−1)はモル吸光係数である。
(i)l=1 cm, A=1.0, ε=100 M−1・cm−1=100 dm3・mol−1・cm−1であるので,濃度cは
c=A
εl=
1.0
(100dm3・mol−1・cm−1)×(1 cm)=1.0×10
−2mol・dm−3
(ii)1%だけ光を透過したときの吸光度はA=log(I0/I)=log(102)=2.0であるので,濃度cは
c=A
εl=
2.0
(100dm3・mol−1・cm−1)×(1 cm)=2.0×10
−2mol・dm−3
【2】 フィリップスらのX線解析結果による提言によると,活性部位近くにあるTrpは62, 63, 108である。リ
ゾチームの基質は細菌の細胞壁にあるムコペプチドに含まれるN─アセチルムラミン酸(NAM)とN─ア
セチルグルコサミン(NAG)の交互共重合体であり,NAMとNAG間のβ─1,4結合を加水分解する。問
題に使われているトリ(N─アセチル─D─グルコサミン)は基質として良好ではないが酵素に結合するの
で阻害剤として働く。
ポリ(NAM─NAG)のリゾチームへの結合は下記のイメージのようなものであり,Trp62とTrp63は
切断されるNAM─NAG結合の2つ非還元末端側にあるNAGの6位ヒドロキシ基(Trp62)と3位ヒドロ
キシ基(Trp63)の酸素と水素結合をしているとされる。なお,図中のGlu32とAsp25は切断反応にかか
わっている2つのカルボン酸であり,図には示していないTrp108はこのGlu35の近くにあり,Gluの
pKa値を高くする(未解離状態を中性pH近辺まで維持させる)役目をすると考えられている。
H H NH CO CH3 OH OH O H H H H NH CO CH3 HO O O O−
OH O H H H O H H O H H O H H H NH CO CH3 OH NAG NAM Trp63
NAG NAM NAG NAM
O H H H NH CO CH3 O NH CHCH3 COOH O NH CHCH3 COOH O NH CHCH3 COOH OH O H OH
非
還
元
末
端
O H H H NH CO CH3 OH O H H O H H H O H H NH CO CH3 OH OH O H O N Trp62 H N
還
元
末
端
切断される 結合
Asp25 Glu32
【3】 ランベルト・ベールの法則から
A=εcl (12.4)
あるpHのチロシン水溶液のプロトン化チロシン(TH)の濃度をcTH,脱プロトン化チロシン(T−)の濃
0.85=εTH(280 nm)×cTH×l+εT−(280 nm)×cT−×l=1900 M−1・cm−1×cTH×l (1)
295 nmの波長で測定したTHのモル吸光係数はεTH(295 nm)=1400 M−1・cm−1,T−のモル吸光係数は
εT(295)− =2400 M−1・cm−1,l=1 cm,吸光度はA=1.05であるので,式(12.4)から
1.05 =εTH(295 nm)×cTH×l+εT−(295 nm)×cT−×l
=1400 M−1・cm−1×cTH×l+2400 M−1・cm−1×c
T−×l (2)
式(1)からcTH=0.447×10−3 mol・dm−3。この値を式(2)に代入すると,cT−=0.177×10−3 mol・dm−3が得
られる。
次にチロシン溶液のpHを求める。チロシンの解離平衡式は
TH T−+H+
で表され,解離定数は
Ka=[T
−[]H+] [TH]
となる。両辺の常用対数をとると
logKa=log[H+]+log[
T−]
[TH] ⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟ となり,この式から
pH=pKa+log[
T−]
[TH] ⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟
を得る。これはヘンダーソン・ハッセルバルヒの式(式(5.5))である。この式から
pH=10.0+log 0.177×10
−3
0.447×10−3
⎛ ⎝⎜
⎞ ⎠⎟=9.60
が得られる。したがって,このチロシン溶液のpHは9.59である。
【4】 波数νは1 cmあたりの振動数であり,波長λ(cm)と
ν(cm−1)= 1
λ(cm)
の関係がある。したがって,波数3000 cm−1の波長は
λ=ν1= 1
3000 cm−1=3.33×10
−4
cm=3.33×10−6m
この波長の電磁波の振動数は
ν=λc =3.00×108m・s−1
3.33×10−6m =9.01×10
13s−1
この振動数の電磁波のエネルギーは
E=hν=(6.63×10−34J・s)×(9.01×1013s−1)=5.97×10−20J
である。
E=kBT=(1.38×10−23J・K−1)×(300 K)=4.14×10−21J
である。したがって,300 Kの熱エネルギーは3000 cm−1の振動エネルギーの7%程度の大きさである。
第
13
講
【1】 CH3CHOにはCH3の1H核とCHOの1H核が存在する。CH3の1H核は水の1H核を基準にして−3.60 ppm
の位置に信号が現れる。さらに,CHOの1H核のJ結合(20 Hz=0.2 ppm)により2本線に分裂する。そ
の相対強度は3である。CHOの1H核は水の1H核を基準にして+4.65 ppmの位置に信号が現れる。さ
らにCH3の等価な3つの1H核により,図1に示すように1 : 3:3 : 1の強度の4本線に分裂する。その相
対強度は1である。CH3CHOの1H NMRスペクトルを図2に示す。
【2】 1H核が3つある官能基はメチル基であり,2種類存在すること,炭素数が5であることから,このアミ
ノ酸はバリンと帰属することができる。その構造式を図3に示す。図4に示す一次元1H NMRスペク
トルでは2つのメチル基の1H核(C1H
3, C2H3)は非等価であり,1.0 ppm付近に現れている。C1H3, C2H3 の1H核はC
βHの1H核とのJ結合により2本に分裂する。CβHの1H核は2.0 ppm付近に現れており,2
つのメチル基(C1H
3, C2H3)の6つの1H核とCαHの1H核がJ結合を示し,複雑な微細構造をもっている。
1 3 3 1
6 4
CHO CH3
1
3
2 0 −2 −4
化学シフト(ppm)
図1 3つの等価な1H核のJ結合に
よるピークの分裂構造
図2 CH3CHOの1H NMRスペクトル
H3C 2
H3C
1 N
+
D3
Cβ
H
H Cα C
O O−
0.0
2.0 1.0
3.0
4.0 4.0
1 1 CαH
CβH 3 3 C1H3 C2H3
3.0 2.0 1.0 1
H化学シフト(ppm)
1 H
化学シフト
(
ppm
)
0.0
図3 アミノ酸バリンの構造式 図4 バリンの一次元1H─NMRスペ